奇跡の瞬間をこの目で見られる
同じ時間に体感できる
これこそ生きる歓び、幸せなのではないでしょうか。
先日(23日)の
藤井二冠の名手「☗4一銀」を紹介します。
先手(手前側)が藤井二冠 後手が対戦相手の松尾八段
今、松尾八段が4四にいた角で8八角成と銀を取って、勝負に出た局面です。
一方、お互いの飛車が横で当たっているので
先手は3四の飛車で後手の8四飛を取ることができます。
実際、誰もがその一手と考え
前もって想定しているのだからすぐ指すと見られていました。
しかし、ここで藤井二冠はあらためてここで1時間考えました。
「飛車を取った後、もっとよい状況を作り出す一手」
はないかと追求して決断した結果・・・
この名手「☗4一銀」が盤上に現れました。
これも歴史である「中原名人の☗5七銀」も想起させます。
松尾八段も途中でこれに気付いた様子で
数十秒でこれを△同金と取りました。
だから、まさに流星のように
一瞬しか盤上で見ることができませんでした。
数手進んで、藤井二冠が左から攻めたのに対し
松尾八段が☖5一金と元の形に戻して受けた局面です。
残り1時間10分のほとんどを使って指しました。
この手もよかったと思いました。
あの☗4一銀に正面から応えた、最も意志の強い手だからです。
そして、これだけの名手順が現れた棋譜の流れを止めることなく
この後も終局まで綺麗な手順で進んだからです。
☗4一銀は盤上に何の痕跡も残さず、でも確かに棋譜にありました。
藤井二冠の棋譜が際立って芸術性の高いものであることを、
一人でも多くの人に感じてもらって、感動してもらえたら有難い。
そんなふうに願っています。